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何故そんな事を聞くのだろう。
花見の日、沖田さんには晋作さんと付き合っている事が知られてしまった。
それを改めて聞こうとしているのだろうか。
「そんな難しい顔するなよ。元気かどうかってだけだ」
「あっ、そうですか。……元気ですよ」
なんでもかんでも疑ってしまい申し訳ないとは思う。だけどこの人との出会いは決して良い物ではなかった。
ほぼ初対面で、新撰組の屯所に連れて行かれて尋問されたのだから。
「いらっしゃ……あっ」
ガラリと入り口の戸が開く音がして、おまさの声が響く。その驚いたような声に全員の視線が自然と店の出入り口へと向いた。
「「あっ……」」
最悪だ。
入ってきた人達と土方さん達と、お互いの声が重なる。
「チッ……ツイてねぇな。吉田、帰るぞ」
「そうですね。景さん、おまささん、また来ます」
晋作さん達だった。なんてタイミングが悪いんだろう。2人は新撰組の姿に気付くとすぐに踵を返す。
去り際に、晋作さんの視線がこちらへと向く。
ばっちりと目が合うと、ほんの僅かだけど微笑んでくれた気がした。
「あいつら、本当にここに来るんだな」
沈黙を破ったの土方さんだった。眉間に皺を寄せて入り口の方をジッと睨む。
私の心臓はバクバクと音を立てている。
何も起こらなくて良かった。
「景ちゃん」
沖田さんの視線が私へと向く。何を言おうとしてるのだろう。
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