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「外、一緒に行こう」
「えっ……」
「2人で話したいんだ。土方さん、良いよね?」
「ああ。……景、少し前に話した事覚えてるだろ? 頼む」
「それはこの間っ……って沖田さん!?」
花見の日に会っている。だけどそれは土方さんは知らないようで。
私が言い終わるより早く沖田さんに手を掴まれて外へと連れ出されてしまった。
店のすぐ裏手に無理矢理連れてこられると、ようやく手が離される。
「沖田さん! なんでこんな無理矢理……」
「ちょっと待ってて」
こんな時だというのに律儀に手を洗いうがいをする。何度か口をすすぐと、ふうっと息を吐いて沖田さんは私を見つめた。
「この間の話、本当なの?」
「……この間って?」
「高杉との事」
その話しかないだろうとは思ってたけれど、やっぱりそうで。
今更隠すのは難しいと思い頷いて答えると、沖田さんの顔は哀しみの色で染まる。
無言で一歩こちらへ近付いてくるから、私も一歩後ろへ下がった。
それを繰り返すうちに気付けば私の後ろには壁があって、逃げる事が出来なくなってしまう。
「お、沖田さん。お話って」
「景ちゃんはどうしたら俺のものになってくれる?」
「えっ……?」
「俺だって本気で景ちゃんが好きなんだ。俺とあいつの何が違う? ……教えてよ」
そう言いながら迫ってくる沖田さんは、いつになく真剣で、だけど今にも泣き出しそうな顔をしている。
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