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私が晋作さんに惹かれたのは何故だろうと考えてみるけれど、決定的な事は多分ない。
だけど私の事を心配してくれたり、優しくしてくれたりするところを見て、段々と好きになっていたんだと思う。
「わかりません。……でも、晋作さんはいつも真っ直ぐで、私の事を気にかけてくれた」
「そんなの俺だって……!!」
「何がっていうのはないけれど……晋作さんの事が好きだと思ったんです」
ギュッと握られた拳はふるふると震えている。なんて声を掛けて良いかわからなくて、私は黙ったままで。
沖田さんの視線は変わらず悲しそうで、胸がキュウッと痛くなった。
「……景ちゃん」
私の名前を呼びながら、端正な沖田さんの顔が近付いてくる。驚いて両手で押し返そうとしたけれど、沖田さんは片手で簡単に、私の手をどけた。
鼻と鼻が触れて、流石に胸がドキドキとしてしまう。
「お、沖田さんっ。離れてくださいっ……」
「俺はね、近藤さんの為に生きているんだ」
「そ、それが……?」
「だから近藤さんの言う事は絶対。景ちゃんを連れて来いって言われたら、それに従わなきゃいけないん」
以前新撰組に連れていかれた時、確かに沖田さんは助けてくれなかった。だけど別に恨んでなんかない。
むしろ仕方ないとさえ思っている。
新撰組のトップは近藤さんなんだから、沖田さんが従うのは当たり前だ。
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