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「だけど、君が現れてからずっと疑問に思い始めた。誰かの為に生きるのって、意味があるのかなって」
正直話を聞くような体勢ではないけれど、無視は出来なかった。沖田さんが自分の事を話そうとしてくれるのだから。
聞かなければならないと思った。
「近藤さんの為に生きてて、もし近藤さんがいなくなったら? ……そうしたら、俺の生きる意味はなくなってしまうって気付いた」
肯定も否定も出来ない。誰かの為に生きる事は決して悪い事ではないと思う。だけど、沖田さんの言う事もわかるから。
「もっと自分の為に生きたいって思った。もちろん近藤さんの為にっていうのは変わらないけれど」
私の両手が自由になる。だけどその代わりに、優しく抱き締められた。
肩の上には沖田さんの頭が預けられている。
「自分の為にって思った時、真っ先に顔が浮かんだのは景ちゃんだったよ。……傷付けた後だったから、会いに行けなかったけれど。今更だけど、本当にごめん」
「大丈夫です。傷は残りませんでしたから」
「うん。でも……怖い思いをさせたと思う」
いつになく優しくて、真剣で。
突き離さない自分に嫌気がさす。こんなの、晋作さんに申し訳ない。
軽く手で沖田さんの肩を押すと、簡単に身体は離れる。
「沖田さん、私晋作さんが好きなんです。……だから、もうこれ以上は」
「わかってる。けれど、この前も言ったように俺は諦めないよ」
全然わかってない。
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