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沖田さんの一声で他の人達、多分新撰組の隊士であろう人達は屯所の方へと歩いていく。
通り様、怪しむような視線が次々と向けられて居心地が悪かった。
2人きりになり、どうしたものかと思い口をモゴモゴとさせていると、沖田さんが先に口を開く。
「何してたの?」
「えっと……原田さんに用があって」
「左之さん? へぇ……珍しいね。でも残念。左之さんは今日はきっと出てこないよ」
「ええっ!! なんでですか!?」
「二日酔い。朝顔を合わせた時にふらふらしながら部屋に戻っていったよ」
それを聞いて、半日無駄になってしまったなと思った。まあ仕方ない事ではあるんだけれども。
おまさには申し訳ないけれどまた別の日に来れば良い。
お礼を言って頭を下げて、お多福へ帰ろうと一歩踏み出す。
「沖田さん。手、離してください」
「左之さんに何の用だったの? 伝えとくよ?」
沖田さんに言っていいものなのだろうか。勝手におまさの気持ちを他の人にバラしてしまうようで悪い気がする。
でもこのまま帰らしてくれなさそう。ガッチリ掴まれちゃってるし。
「はぁ……。おまさがね、原田さんと逢引したいんですって」
渋々口を開くと、沖田さんから返事がなくって。顔を見ると目をまん丸にして固まっている。
そんなに驚く事だったのだろうか。
「あの〜? 沖田さん聞いてます?」
空いてる方の手を目の前でひらひらと振ると、ハッとして私を見つめた。
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