147人が本棚に入れています
本棚に追加
「景ちゃん! 大丈夫? 何もされてない?」
「うん。ちょっと沖田さんと話してくる。……原田さん、おまさの両親が来るまでおまさの事お願い出来ますか?」
「おう。もちろん任せとけ! おまさちゃんの事は俺が守るよ」
原田さんにおまさの事を頼むと快諾してくれたので助かった。
沖田さんと話すと伝えると、おまさは少し納得してない顔をしたけれど、"景ちゃんが良いなら"と言って渋々見送ってくれた。
沖田さんは私が戻ってきたのを見ると、少しだけ微笑んだ気がする。その笑顔を見て、胸がギュッと締めつけられた。
「行こっか。……近くに俺が贔屓にしてるところがあるから」
「わかりました」
大人しく沖田さんの後を着いていく。道中、沖田さんは一言も話さなかったし私の方を見向きもしなかった。
川沿いから数分歩いて着いた一軒の2階建て建物。食べ物の香りはしてこないから、食事の出来るところではなさそうだ。普通の民家にも見える。
「ここですか?」
「うん。……知ってる?」
「いえ。初めて来ました」
私の返答を聞いて、今度はホッとしたような顔をする。ここを知っていたらダメなのだろうか。
中に入ると受付みたいなところがあって、気怠そうに座る男の人が。
沖田さんは贔屓と言ってるだけあって、その人と一言、二言交わすと"行こう"と言って、階段を上がっていく。
私は置いていかれないように慌てて後を追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!