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6畳ほどの広さの部屋にぽつんと置かれた1組の布団。奥には小さめのテーブルが置かれている。
「ここは……?」
「景ちゃんは……知らなくて大丈夫だよ」
そう言いながら沖田さんは布団の端に腰をおろす。座布団がないから仕方ないのだろうけど。
"おいで"と言われたけれど、隣に座るのはなんだか躊躇ってしまう。
「大丈夫。何もしないから。そんなとこに立ってたら疲れちゃうよ」
「……わかりました。失礼します」
渋々隣に肩を並べると沖田さんはまた微笑んだ。元気がないし落ち込んでいる、と聞いていたけれど思っていたよりも大丈夫そうだ。
まさか土方さんに騙された……?
そんな考えが一瞬頭をよぎった。そんなはずはないと思いたいんだけれど。
「景ちゃん、ありがとう。土方さんに言われたから付き合ってくれてるんでしょ?」
「えっ?」
「知ってる。お多福に行って、俺と話してあげてって頼まれたよね」
「知ってたんですか?」
こくりと頷くと、今まで畳を見つめて話していた沖田さんの視線が私の方に向く。透き通った綺麗な黒い瞳は、何もかもが見透かされてしまいそうで少し怖くも感じる。
「ごめんね」
出てきた言葉は、今にも消えてしまいそうなほど小さな声だった。眉を下げて悲しそうな顔をする沖田さん。
首を横に振ると、僅かに肩が震えた気がする。
「大丈夫です。傷跡は残らなかったので」
「……心配だったけれど、ずっと合わせる顔がなかったんだ」
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