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「俺らしくないな、こんなの。たった1人の、何の力もない女の子に振り回されて、かき乱されて。……らしくないよ、本当に」
「……私の知ってる沖田さんじゃないみたいです」
「君の知ってる俺なんて、ほんの一部だよ。知らないでしょ? 俺が本当に景ちゃんを大事に想ってる事も」
「きゃっ!」
グイッと手を引かれてバランスを崩して、視界が紺色でいっぱいになる。慌てて離れようとしたけれど、力強い腕にそれは阻まれてしまう。
「お、沖田さん! 離してっ……」
「好きだよ。……あの日以来、景ちゃんの事がずっと頭から離れなかったんだ」
「そ、そんなの……罪悪感じゃないんですか? だから頭から離れないだけで……。それに」
それならどうして1回も来てくれなかったの?
そう思ったけれど言葉は続かなかった。だってそんなのまるで、来て欲しかったみたいに聞こえてしまいそうだから。
「景ちゃん、俺の傍にいてよ」
「……無理です。だって私」
何だかドタバタと外が騒がしい。沖田さんもそれに気付いたのか、障子の方へと目を向ける。それと同時に、勢いよく障子が開いた。
「晋作さんっ!?」
血相を変えて入ってきたのは晋作さんだった。余程慌ててきたのか、ぜぇぜぇと息が上がっている。
「景! ワン公てめぇ……景に何してんだ!!」
沖田さんは晋作さんに動じもせず、黙って私を抱き締める腕に力を込めた。
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