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「景ちゃん、今日はごめん。……またね」
それだけ言って、沖田さんの足音は遠ざかっていく。まだ、心臓はドキドキと音を立てていた。
今まで見たことのない姿を今日1日でたくさん見た気がする。
「景。大丈夫か?」
「す、すみません! ボーッとしてて……」
「久しぶりだな。こんな形だけど、会えて嬉しい」
そっと抱き寄せられると、徐々に心臓は落ち着きを取り戻していく。晋作さんの腕の中にいると、どうも安心してしまうようだ。
胸に顔を埋めると、晋作さんの腕に力がこもる。ほんの少しだけ震える腕。顔を上げると、目を細めて切なそうな顔で私を見つめている。
「こんなところに沖田が景を連れ込んだと聞いて、僕は怖かった。会わない内に心が傾いてしまったんじゃないかとか、色々考えてしまって」
「こんなところ? さっきも言ってましたけど、ここってなんなんですか?」
「その……男が女を抱くところ、と言えばわかるか?」
晋作さんの言葉を聞いて、流石に私も理解をした。そうすると布団があったのも納得が出来る。
顔が熱い。耳まできっと赤くなっていると思う。
「そんな反応をされると困る。僕だって男だ」
「ご、ごめんなさい! でも意識するとやっぱり恥ずかしくって……」
「今日の景は見た事のない着物を着てて、花のように愛らしい。……本当に、困る」
そう言われて、次の瞬間には視界が晋作さんの緑色の着物で一杯になった。
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