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俺は思わず尻餅をついた。
「こ、これは・・・」
無心に他の穴を覗いては他の穴を探す。
そして覗く穴がなくなれば階段を上り新しい穴を求めた。
「ははは!間違いない。これは、俺の記憶!」
階段に座り溢れんばかりの笑い声を必死に抑え込む。
「ふ、ふふふ・・・!こんな芸術的な殺人は俺の他にできるやつなんていない!」
穴から流れる映像は俺が今までに犯してきた殺人の一部始終だ。
見るたびに思い出し、心は踊り更に他の殺人の記憶を求める。
穴を求めることに夢中になって階段を上っていたらいつの間にか階段は終わりを迎えていた。
「・・・もう終わりか。つまらねぇ」
階段は急になくなっていて、下を覗くと何も見えずただただ暗闇が広がっていた。
恐怖を忘れ、自分の殺人に酔っていた俺は現実に押し戻された。
「戻ろう」
階段を下ろうとしたその時、いきなり後ろから背中を押された。
「なっ!」
俺は暗闇の底へ落ちる途中背中を押した人物の顔をはっきりと見た。
あれは、あの顔は・・・。
「俺、だ・・・!!」
ついに俺はやったんだ。
普通の殺人に飽きた俺は、自分を殺すことを求めたんだ。
「ははは、はーはっはっは!」
暗闇に消えても尚、高らかに笑う彼の声は暫く階段中に響いていた。
了
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