蕾の頃

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「あ、あのさ、禅」  俺の声に、禅───櫻井禅は怪訝そうに振り向いた。 「なんだよ、この世の終わりみたいな顔で」 ・・・事と次第によってはこの世の終わりだ。 「あ、あのな」 「うん」  手のひらに汗をかいているのを感じながら、思いきって息を吸う。吐き出す勢いで思いを告げた。 「お前が、好きなんだ」 「は?」 「おっ、男同士で気持ち悪いけど、でも、ずっと俺・・・」  涙が溢れそうだった。 「───サンキュ。でも、答えはちょっと待ってな」 え・・・? 「ちょっと、確認しときたいから」  不意に、禅のくちびるが俺のくちびるを食む。 ・・・え?え?え?  完璧に混乱した頭で、茫然としていると、禅がゆっくり離れた。 「ん、嫌じゃないな。俺もお前が好きだよ」  にこりと笑う禅は、俺のよく知っている禅で、ちょっと頬を薄紅に染めている。───それは、桜とよく似た色で。  固い蕾が綻ぶように、俺の想いは意外な形で綻んだ。  サクラサク・・・春。
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