第2章 春

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「かーず、和成ってば!聞いてる?」  部室でジャージに着替えながら、カズナリがアキミに耳許で怒鳴られて、うんざりした顔をする。 「残念ながらよく聞こえてるよ」  アキミの魂胆は見えている。今日出された地学の宿題だった。 「アキはいちページ五百円な」 「ええ~高い~」 「文句あんなら自分でやれ」 「そんなぁ~。三百円でどお?」 「イ・ヤ・だ・ね」 「分かった、俺も男だ!学食のデザート一週間!どうだ!」 「───乗った」  甘党敗れたり。  部活が同じ、クラスもずっと一緒。そして寮の部屋まで同じなら、いい加減嫌になりそうなものだが、何せ幼稚園から隣にいたから、いるのが当たり前。   幼稚園の時、人参が食べられなくて半ベソをかくアキミの人参を、カズナリが見つからないようにそっと食べてくれたり。  蝉が捕まえられなくて、ビクビクしていたカズナリの虫かごに自分が捕まえた蝉をアキミがさりげなく入れてくれたり。  お互いができる事、できない事、をフォローしあって成長してきた。 それが当たり前と生きてきた。 「よかったあ~。今晩写させて」 「一週間、忘れんなよ」 「そりゃもう、和成さまのデザートですから」  もみもみと揉み手をするアキミを、気色悪いよ、とスパイクで蹴る。
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