それは佇む

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 A子さんはとまどった。友人は何を言いたいのか。 「こっちを見上げている頭も。その頭がね…時折、転がり落ちるの」 「え?」 「ぐしゃっ、と地面の上に落ちるのよ。そうしたら、そいつ…ギクシャクした動きで、拾って…またのせるのよ。自分の頭を…」  沈黙したA子さんの前で、あの自嘲的な笑みが広がる。 「無駄って意味…分かってくれた?」  まもなく友人は、大学に来なくなった。電話にも出ない。LINEも既読にならない。  住所は知っているものの、A子さんには友人宅を訪れる勇気がないのだそうだ。
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