17人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かに見た目は痛そうだけどさ、痛みはと言えばそこまで痛くは無いんだよね」
「ほら、立てるし」と壁を伝いにしてヨロヨロと覚束無い足取りで立ち上がった優也は「ほら」と自慢気な表情を此方へ向けて笑う。
「お、おう」
「お前が元気ならそれで良いんだけどな」と困惑気味に頭を掻く俺の横をスイッと通り過ぎた優也が部屋の中を探索し始める。
ポーカー台をひっくり返さんとばかりの勢いで台の裏側を見たり、椅子を蹴散らす様にして椅子を観察したりとかなり手荒に探索している様だった。
俺はもう既に一通りの探索を終えていたので、何処か近くの手頃な位置に腰掛けながら優也の探索が終わるのを待っていた。
優也は未だに荒々しい手付きで探索を続けている様で、時々聞こえて来る「おりゃあ!」と言う声がその荒々しさを物語っている。
俺はそんな優也の声を聞きながら、此処に来た経緯についてもう一度考える事に思いを馳せていた。
俺等は確か、街で遊んだ帰りに六時二十八分着のバスに乗って帰ろうとしていた所を謎の男達に拉致されたんだ。
その時の記憶は曖昧だが、唯一覚えているのは後ろからハンカチの様な物を口に押し当てられた事位か。
となると俺等が拉致されたであろう時刻はバスの到着時間の六時二十八分頃になると言う訳だ。
そこから腹も減っていないし眠くなる様な気配も皆無、拉致されてからそこ迄の時間は経っていないと見ても大丈夫だろう。
最初のコメントを投稿しよう!