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「痛…」
慣れない頭の感覚で目を覚ました僕は、その見慣れない風景に唖然とした。
「此処…何処?」
息を飲み込んで辺りを見渡す。
その部屋は一面中コンクリート仕様で出来ている様で、冷たい感覚が床から込み上げて来る中々に肌寒い部屋だった。
何故か扉は無く、その代わりとしてか高い位置に光の射さない窓がある。
きっと僕は此処から部屋に入れられたのではないだろうかと、頭の痛みがそう告げた。
「それにこれは…」
モニター、だろうか。
随分と大きいサイズで、僕が両手を広げた位までの長さがある。
こんなの最早テレビに近いのではと、僕はモニターを観察し始める。
その時だった。
「おい、優也!」
聞き慣れた声がモニターから聞こえ、それとほぼ同時にモニターへ映像が映った。
「隼人…!」
其処には焦った表情でモニターに映り込む幼馴染み、東雲隼人の姿があった。
「おい優也、大丈夫か!?」
「うん…僕は大丈夫」
そうは言うものの不安は隠し切れなかった様で、僕は地面に膝を付いた。
「何で僕達はこんな所に…?」
「さぁな…分っかんねぇ。
ただ俺等が2人で遊んでいた事は覚えてんだ、何かあったならその後だ」
隼人がグッと拳を握る。
確かに今日は彼と2人で遊んだ。
僕等は家が近いものの、僕が私立中学で隼人が公立中学で通っている中学が違う。
今日は半年振り位に会って遊んだ日だった筈だが…。
「そう、だね…」
震える手を押さえて呟く。
今思ったら、隼人の後ろに広がる部屋も僕のに酷似している。同じ部屋なのだろうか。
「クソッ…どうなってんだ」
「分からない…でも僕等はどうする事も出来ないよ」
「チッ…くそっ!」
隼人が壁を蹴る。
僕はただ不安げな面持ちでそれを見詰めていた。
すると突然、部屋中に不快なノイズ音が鳴り響いた。
「わっ…」
「うおっ」
僕と隼人が慌てて耳を塞ぐと、暫くしてそのノイズ音は鳴り止んだ。
その代わりに聞こえて来たのは機械的な若い女性の声。
『東雲隼人様』
「……あ?」
女性が隼人の名前を呼ぶと、隼人は不機嫌そうに天井を見詰めた。
隼人は随分見ない間に不良っぽくなったんだなぁと思っていたら、今度は『錦戸優也様』と女性が僕を呼んだ。
酷く冷酷な声に背筋が凍る。
僕等はこれから…どうなるのだろう。
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