カビ女

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ある日のこと。 「夕食はどうする?」と、明乃に話掛けました。 そして私の全身は凍り付いたのです。 私が見た明乃は、向かって左額の辺りに茶色い渦が巻き蠢く渦は生き物のようです!そして不穏な気配を感じ彼女の横を見ると、なんと!渦と同じく蠢く茶色い人影が立っていたのです! ヒッ! と、声が漏れそうになった私。体は硬直しました。しかし茶色い人影から目が離せません! やがて人影は、明乃の左額の辺りの渦にグルグルと回りながら飲み込まれて行きました。 「コロッケは?」と、明乃が言います。 「え!」と、驚きが勢いに変わり返事をした私は……。 更に彼女の顔を見て驚愕しました。 顔中にあるシミ、左右が不自然に膨らむ頬、口元は片方の口端が異様な程に釣り上がっています。 この日の私はキッチンにて。震える体を食事の支度という行動に必死で置き換えました。  最近の私達は口数が減っています。 新たな事象として。 茶色と黒の影のような物。白い靄のような物。それらの形は人型、崩れた円、煙。そのような物が明乃に纏わり付いたり、体の中に出入りをしています。 私は震え上がるしかありません。 気付いたことと言えば。 明乃がいなければ、部屋の雰囲気は変わり、臭いも消えるということです。 除湿機を購入後、更に空気清浄機とナノイー発生機を購入。部屋でフル稼働をしています。 私は掃除に励み、節約に励み、ひとり暮らしの資金を貯めています。 これが普通ではないことは私でも分かりますから……。 完
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