『嗤う神主』

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 もう、どうしようもなく辛い。  二十四時間、きっと目を瞑っている時もそう思っています。目的地に向かう、今も、辛く重苦しい気持ちで、それでも強制的に生かされています。  この物は、私の事を、どうしようとしているのか? 涙は、その跡が隠せない程、深く皮膚を撫でています。二十五件。本物とされる霊能者に会ったけれど、何一つ解決せず、むしろ彼らの内、何名かを再起不能に陥れてしまいました。私は今、最後の犠牲者からもたらされた最後の希望に向かっています。  地面から足の裏を剥がしたくない程の重い足取りで、霧深い山中の石階段を登り幾時間、ぼんやりと、鳥居らしきものが見えます。  途端に、重力が二倍、三倍、四倍と重く圧し掛かる感覚。私は、何故か、それでも進まなければならないと、自分の意志で歩を進めます。 「否」その一言で後ろを振り返った私。そこに立つのは、漆黒の袴と、それ以上に黒く起伏の無い面を付けた神主でした。胸元と艶やかに垂れ下がる黒髪が女性である事を気付かせてくれましたが、一段下の階段に凛とする姿は、それなりの私の背よりもさらに高く、神々しく、不動の力強さを感じました。 「ふぁっ」と息を吐いた。瞬間、背負ったものが騒めき出した。カビの深い根のような物が全身に張り巡らされ、それを無理やり毟り千切られるような感触。毛穴の一つ一つに針を刺されるような痛覚への衝撃。私は、硬い石階段の上へ沈んだ。
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