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我が兄もそうだが、やっぱり直接口を付けて飲んでいる光景がありえない。飲むならきちんとコップに注いで欲しい。衛生的にも嫌だし、「なんて品がないんだ」と嫌悪感を抱いてしまう。私が大好きなテレビの中の俳優さんは、だいたいどんなシーンでも洒落たグラスに注ぎ優雅な仕草で飲んでいる。ヤンキーな役でもなぜか必ずといっていい程いちいちグラスで飲んでいて、インターネット等ではバカにされたりもするが、いつの間にか定番シーンのようで「また注いでるw」「そのまま飲めよw」と話題になっている。長い手で掴む飲み物がまた画になっていて素敵なんだ。幼い子役のころは「お金持ちのお坊ちゃん」って感じだし、中高生を演じていてもやっぱり紳士的で……あぁ、こんな一般人の男なんてなにやってもブサイクだ。
「失礼なこと言わないでよバカな兄が女の子のお尻を追いかけてばかりいて帰ってこないからいけないんじゃない」
「俺はバカなオヤジに似てねぇよ。サッカーボールを追いかけてんだよ」
「おじさんは仕事でしょ」
「母ちゃんの他に女が居んだよ」
「おばさんが亡くなって10年も経ってるんだし、別にそろそろ――」
「そういう問題じゃねぇよ。俺と凛の母親は母ちゃんだけだ」
あからさまに嫌悪感を示す幼馴染の表情に私はどんな態度をとればいいのかよくわかっていない。口ではこうやって光也と言い合えるけど、生まれた病院から一緒に兄弟のように育ってきたとはいえ、他人様(ひとさま)の家庭事情に首をつっこんでいいのかがわからないし、勢い任せに言ってしまって後で後悔することも多々ある。
「姫菜の母ちゃんに世話になってるし、オ……レにとっても、凛! り……ん、にとっても本当の家族みてぇに――と――。あ、りがたい……っつーか……――」
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