第1章

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兄貴に「壱兄が笑ってた」と報告したら「はぁ? バカじゃね。アニキが笑うわけねぇだろ」と鼻で笑われたし、双子の片割れに言っても、お母さんに言っても信じてもらえなかった。それだけ、壱兄は笑わない人なんだ。長男の壱兄は優しくて「お兄ちゃん」と呼ぶが、1歳上の次男はヤンキーのバカだし、妹の私をパシリ扱いするから「兄貴」としか呼ばないし、兄だとは思いたくない人種。双子の片割れは……イカレてる。双子だと思われたくないし、関わりたくない程大嫌いだ。私が双子の姉だと思いたくもない。男女の双子だから一卵性の双子ではなくて容姿、性格、趣味などが似ていないのは、生物学上では当たり前らしいが―― 「ですから、凛ちゃんのお兄様、彼女を私にください」 私は口角を持ち上げて、気色悪くモジモジとしている光也をバカにするかのように笑う。 「だっ……から、そんな呼び方すんじゃねぇっつってんだろ! 俺が凛のオマケみたいじゃねーか」 そう。こっちの態度の方が光也らしいし、会話しやすい。男ならモジモジするなって私は思う。怒鳴りつけるように喋るのは鬱陶しいが、オカマは大嫌いだ。 「そうだよ。アンタはオマケ。凛ちゃんが本命ですのでアンタは関係ない。あくまで「凛ちゃんの兄」であって「光也の妹」ではない」 キッパリと自分の意見を言い放つと、光也は眉毛をハの字にさせ、なにかを言いたそうな目で睨みつけてくる。 その頬を赤く染めた顔とか本当にあり得ないほど気色悪い。 学校ではサバサバした性格で、勉強はできないが運動神経がよく、リーダー的な性格で、妹の面倒をよく見ていたせいか、男女問わず人気があるが、言いたいことはバカ正直に発言している性格だから人望もあるのだと思うけど、学校や塾の友達が居ない時や、こうして私と2人で居る時はなぜかモジモジとして視線を泳がせたりし始める。 学校での態度が素の性格なのか、私と居る時が素の性格なのか幼馴染とはいえ光也の方が「外で話かけてくんな」と言うようになって避け始めたものだから、私はコイツの本性なんて知らないし、興味そのものを抱かない。 家の外でコイツが猫をかぶって女の子をキャーキャー言わせてようが、私に迷惑がかからなければどうだっていい。
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