いちごみるく

変わらない日々と変わったもの

翌、金曜の夜中
週一の夜勤に欠伸をかみ殺していると強面のリーマンが入ってきた
ぴちっとスーツを着こなし、髪をまとめたリーマン
こいつも仕事できそうだな
「お願いする」
ピッ、ピッ、ピッ
お茶とチョコパフェ、いちごみるくのキャンディ
まじかよ
「６７８円です」
「これで」
「５円のお返しです」
テキパキ釣銭とレシートを渡して袋に詰める
デザートスプーンとお手拭き、あと大きめのスプーンも入れとくか。リーマンでかいし
「ありがとうございました」
袋を渡すと固そうな顏を少し和らげた
「ありがとう」
コンビニ店員にお礼をいう奴、初めてみた

以降、甘党リーマンは同じ時間帯に来た
大抵お茶とパフェやケーキ、そしていちごみるくのキャンディ
決まって釣銭は５円
あと
「ありがとう」
多分、少し嬉しそうに礼を言って帰る
別に大したことじゃない
常連客が増えただけだ
コンビニだしよくある事
俺に関係のない事だ
夜勤を終え朝方帰宅すると玄関前に人影があった
「あ、兄ちゃんおかえり」
「ただいま…ってもう起きてんのかよ」
「課題の締め切り近くて」
「あっそ」
特待生は優秀なことで
「兄ちゃん」
「んだよ」
「なんか、いいことあった？」
「はぁ？なんで」
「いやなんとなく」
「俺寝るから」
「おやすみ兄ちゃん」
いいこと？
いいことなんてあるもんか
ただ、お礼を言われただけだ