電車

4/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
すると突然、しなやかな手に 腕を思いっきりつかまれた。 俺をつかんでいる、しなやかな白い手をたどって 目線を下げると、 ミニのタイトスカートを穿いていて、 ほど良い肉付きの、色っぽい脚があった。 足先から徐々に目線をあげていくと、 美しい白い手と色っぽい脚から想像したとおりの、 魅力的な若い女だった。 「カーディガンで隠したつもりだろうけど、 全部バレてるのよ! あなたが女性のファスナーを 下ろした瞬間をはっきり見たわ。 私が現行犯で逮捕します!」 俺は頼まれたことをしただけなのに、 逮捕されるのか? それとも、多額の示談金を要求してくる 詐欺に遭ったのか? と思いを巡らせている間に、 腕をつかんでいたタイトスカートの女は、 首に巻いていた、紺色のスカーフを取り、 俺の両手首を固く縛った。 スカーフで縛られた俺は、 乗客に、冷たい視線でじろじろと見られた。 小心者の俺は、犯罪など犯す勇気がない。 もちろん、小心者だからしないのではなくて、 ゆるぎない良心があるからだ。 犯罪者を見る目で、俺は見られてる。 そう思うと、激しい動悸がしてきた。 妙なことに、 快楽に近いものを感じてしまったようで、 どうにも身体がうずく。 「最近、痴漢のニュースばっかだもんな。 爽やかな顔してんのに、困った兄ちゃんだ」 と、前の座席に座っている 怖い顔した中年のおじさんに、 からかうように言われ、笑われた。 完全に俺は痴漢に間違われている。 こんなことになったのは、 ファスナーを下げてほしいと頼んできた 女の責任だ。 どうしてくれるのかと思いながら、 隣に座る女の方を見ると、 顔を真っ赤にして、 いかにも恥ずかしそうな様子に、 俺は、本当は痴漢をしてしまったのではないかと、 錯覚に近い想いを起こした。 冷たい汗が額と背中を通り過ぎた。 アナウンスが流れ、 電車はまもなく駅に到着する。 俺の手を縛ったタイトスカートの女は、 怖い顔つきで、 「着いたら降りてもらうわよ」 と言ってきた。 「もちろんあなたもね」 と、隣に座ってる女にも声をかけた。 電車が駅に到着して、俺たち三人は電車から降りた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!