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「元気そうね」と、まんまと同行したゆかりが真備の背後から声を掛けた。きらめくような美しい笑顔だった。
ゆるやかにウェーブがかったブラウンロングの髪に、秋らしい色使いのスーツ。顔立ちはそれ自体が一級の芸術品のように整っていて、いかにも仕事が出来そうな颯爽とした美人だ。スタイルもたいていのモデルは裸足で逃げ出しそうなボディーラインと脚線美である。しかも真備と共にこの家まで自転車をこいできていて、汗一つかいていなかった。
玄関のチェーンロックが外され、鍵が開く音がした。
ロングヘアを揺らして出てきたのは、清楚な若い女性だった。
二十歳の大学生。「ぬばたまの」と言いたくなるようなしっとり濡れたようにつややかな黒髪と、色白でありながらほんのり桃色に染まった頬、薄い唇。そして線の細い姿が、深窓の令嬢を連想させる。羽織っているカーディガンもロングスカートも品があり、何より彼女の美しさを引き立てていた。大切に育てられてきたことがよく分かる。
「お待たせいたしまし――えっ!?」
その女性、桜子は真備を見て絶句した。正しくは、真備の左隣に立つ人物を見て。
「真備、さん? その、隣にいるのは……」
「ははは……。さっきそこで一緒になってね」
真備が鼻の頭を掻きながら苦笑いして、彼の左隣に立つ人物に顔を向けた。パーカーを羽織り、短いスカートの下にレギンスを履いた十歳くらいのかわいらしい少女だ。
ただし、普通の少女ではない。
白髪で、頭の上に狐耳があり、おしりにふさふさとした木の葉型のしっぽが生えていて、霊視能力のある人間にしか視えない存在――つまりは霊的な存在だった。
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