春の訪れ

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 いま、5月の中旬からこの地域の田んぼではどこもかしこも田植え機の音がしている。  梅雨に入る前の春の日差しが少し強く感じるようになる季節。 ちょっと天気がいいと暑く感じるくらいだ。  ほんの少し前まで、あれだけあった雪は一気に溶け出し、今は見る影もない。  そして何も無かった田んぼは新たに土を掘り起こし、水を張り、新しい稲を植えこんでいく。  黒い田んぼの水に反射する陽の光。  その中にうっすらと見え隠れするような淡い感じの稲の緑。  新しい命の源が今、この田んぼに植え込まれている。    新しい命。  新しい人生。  私の長く辛い冬は、雪解けとともに終わりを告げた。  私と佑太は田植えが終わり、あの真っすぐに突き進む夏を迎える前。  そう来月、六月に結婚をする。  今の陽の光は私たちをほのかに暖かく包み込んでくれる。  いいえ、私は……彼の暖かさに包まれている。  佑太は私の雪を、私の心の氷を溶かしてくれた。  あんなにも辛く悲しい私の氷の心を。  ううん。  佑太だけじゃない。  お父さんにお母さん。おじいちゃん、おばあちゃん。  学校の先生に友達。  そして、私の周りにいる地域の人たち。     
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