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ツィトスクジラという巨大な鯨の王がいる。
そこはこの世界のどこかにある、どこよりも広く、豊かな海であった。鯨の治める海はツィトランドと呼ばれているのだった。
その広大な、豊かな海には、ユザという民が住んでいる。ユザは絵や文章を通じてコミュニケーションを取る生命体であった。
ユザは様々な情報を収集する生き物である。また互いに知らない情報を交換し、時として新しい情報を生み出した。
そんなユザの民の話にツィトクジラは好んで耳を傾けた。
ツィトクジラはユザの民たちの王であり、この海の王である。
しかるにツィトクジラはツィトランドの外を知らないのだ。それゆえユザの民の話はツィトクジラにとって唯一の娯楽であった。
ときおり、ユザたちが外の世界の話をしていることがあった。その世界はユザの民にリアと呼ばれていた。
例えば、こんな話である。
「この夏6回目の肉会でござる」
「ビアガーデンなう。暑苦しいやつばかりだ」
「のみわず~。よっぱよっぱ~」
ツィトクジラはユザの民が話すリアという世界の楽し気な話が大好きであった。
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