0人が本棚に入れています
本棚に追加
王と王国の悲劇
この日もツィトクジラはユザたちが話している姿を眺めていた。
「怒涛の一週間。つらいー」
「つらぽよー」
「吐血しそうな忙しさ」
「生きててごめんなさいって思うこと多い」
ツィトクジラはユザたちが心配になった。ここのところ、リアで異常があるらしくユザが苦しんでいるのだ。
国王たるツィトクジラは何とかして苦しむユザの民を助けようと、他のユザにも話を聞いた。
以前のように楽しいリアの話をするものも多かったが、一方で陰鬱なことを述べる民を少なくなかった。
さらに話を聞いていこうと、ついにツィトクジラはツィトランドの衛兵を使って、王国全体の調査を行うことを決め、海のすべての領域に衛兵を放った。
ツィトクジラの前には衛兵長がいた。
「国王様、ご報告です」
件の調査報告であった。
「待って居ったぞ。話してみよ」
「はっ。調査の結果、陰鬱な表現を使うものが次第に増えていることが分かりました。また分析班が何やら興味深い結果が出るやもと、現在独自の分析を行っております」
「やはり増えておるのか」
ツィトクジラはため息をついた。自分の目の届かないところで、陰鬱さを増していたという結果は、ツィトクジラを傷心させた。
リアから持ち込まれた流行り病なのか、あるいは国土に根付いた疫病か、と思考を巡らす。早急に手を打ちかった。
コンッ、コンッ、部屋の扉を叩く音がした。
ツィトクジラが扉係に目配せをすると、扉がゆっくりと開く。
「はいれ!」
「はっ。」
若い衛兵が入ってきた。扉係に威勢よく返事をして、衛兵長のもとに駆け寄る。連絡係のようであった。
衛兵長は静かに若い衛兵からの連絡を聞いている。ツィトクジラはその様子を見守った。
「なにっ」
つぶやくような声であった。が、明らかに荒々しかった。
少し困ったような表情を浮かべてから、衛兵長は話し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!