王と王国の悲劇

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「国王様、分析班の結果が出たようです。陰鬱なユザたちが、共通して接触したものが居たとのこと」 「共通とはどういうことだ?」 「特定のものに接触することで、そのコミュニティが荒れたという話でありまして、確認したところ、そのものは何やら物騒なことを常日頃言っていたとか。いかがいたしましょう」  ツィトクジラは例のものの存在を疑わしく思った。そのものはもしやリアという世界から紛れ込んだのではとも思った。  ツィトクジラの知る国は平和そのもので、そのようなものがいるとは考えにくい、いや考えたくなかったのだ。  その晩、衛兵長から聞いた話をもとに、件のものの話を直接聞くことにした。  そのものはコミュニティに属していなかった。  しばらく何もない土地が続いたが、目的の場所に近づくに従い、遠吠えのように声が響いていた。  それは数々の、例の物騒な言葉であった。  まさかと思ったが、その言葉は件のものが発し続けているものであった。  陰鬱なユザの民の調査はツィトクジラを消耗させていた。ツィトクジラは療養を取り、回復してからこう言った。 「例のものが言う言葉を使うものを国外追放せよ」  冷静な声であった。はっきりとしていたが、静かにつぶやくようでもある。  ツィトランドの王の決断だった。
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