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側らで見ていた亜弓は、香湖のミスが信じられなかった。
そしてそのミスに呼応するかのように、香湖の表情も苦痛に満ちていた。
「カコ…大丈夫?凄い汗だよ?」
「何、心配するな、少しミスしただけだ…」
そう言った香湖の額からは汗が滲み出ていた。
ファイナルラウンドが始まっても、香湖の豪鬼は本来の動きを取り戻せなかった。
「どうしたんだよ。カコ…」
「…少し…黙っていてくれ…」
その声は明らかに怯えにも似た響きがあった、心なしか香湖の手が震えているのに気がついた亜弓は、
コンパネに添えられている香湖の右手の甲にそっと触れた。
香湖はモニターから視線を離さず、焦りの混じった声で亜弓に言った。
「…何をする。操作の邪魔をするな亜弓」
苦しみながらも、香湖は必死に豪鬼を操っていたが、
当初の華麗な立ち回りは完全に失われ、今や完全に精彩を欠いていた。
「カコ…」
亜弓はおろおろと香湖の名前を呟くだけだったが、彼女に触れた手はけして離さなかった。
豪鬼の体力は、ユリアンに大きく離されていった。
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