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私は恐怖を感じているのか、と香湖は己に問う。
このユリアン使いに?だからミスを犯した?(違う)
この震えは、恐怖?(違う)敗北を恐れている。(違う違う)
集中しろ。(違う)考える刻があるものか。(違う)
「…黙れ」
香湖は憎らしげに呟く。傍らで、手を触れている亜弓は、自分の事かと不安げに
香湖の顔を覗いたが、香湖の視線は、苦しげに、モニターに向けられたままだった。
その香湖の呟きは、誰に向けられたものでもなかった。
「何が違う…黙れ」
震えるな、恐れるな、考えるな、倒れるな、逃げるな…。
いや…。この感覚は、一度、あった。
香湖の脳裏には刹那、(一)、過去の記憶が、(三)、よぎる。それは、遠くない過去。(九)、
何を考えている、私は、(八)、闘いに集中しろ。(闘いに集中しろ)
(一)、そんな事が、これは、(三)、何だ。
亜弓。手をどかせ!重い。ボタンが押せない。
(九)、亜弓!(八)。手をどかせ!でなければ負ける。
私は、(一)、に、勝てない、
(三)、に、(九)、に(八)、
から、再び逃げる訳にはいかない。
(逃げる訳にはいかない!)
ああ、そうか、香湖は思った。
(これは、…だ…。)
これは、三九八か。
(一三九八…。ニノマエサクヤ…だ)
…居るのか…近くに。
私はそれを感じているのか…。
「ニノマエサクヤ!」
香湖がそう呟くと、彼女には、まるで止まっていた時が動き出す様に感じた。
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