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カウンターの前では、大谷と日高が、日野桜の言葉に目を丸くしていた。
そして大谷の顔は見る見る真っ赤になり、真っ青になり、やがてどす黒く変色した。
主に怒りと恐怖と絶望の為にである。
大谷は改めて確認するように桜の云った言葉を繰り返えし尋ねる。
「君は案山子に手助けするように頼まれたが、その内容を案山子は言わなかったうえに
今初めてその内容を知って君はこう云ったね。『私はサードというゲームはやったことがない』と」
桜は無言で頷く。可也恐縮している。
「いや、ごめん。そう困らなくていいよ…。
ああそうか、あいつは俺の首が飛んでもいいんだな。
そうかそうか。そういえば俺に対して冷たいし…。
いや君、そんなに困らないで。
君は悪くない。何も知らなかったんだ。
でも何で君をここに呼んだんだろうね。案山子は」
大谷は顔を引きつらせ、冷や汗をかきながら云う。
桜は首を横に振ったが、暫くしてどきどきランドのゲーム筐体の一つを指差しながら言った。
「私あのゲームは、少しやったことがあるんです…。泉田さんともあのゲームで一度対戦しました。
でも一度だけなんです」
桜の指差したゲームは、スーパーストリートファイター2X通称スパ2であった。
大谷は青い顔を更に真っ青にした。軽い眩暈を覚える。
「ははははは。おい日高!」
大谷は傍らの日高に振り向かず云う。
「あの女の子達を呼んで来い。至急だ。どうしても頼みたい事があると云うんだ」
日高もそれしかないと感じたのか無言で頷くと、香湖と亜弓の方に向かった。
上代は、大谷達の様子に気が付いた様で、中条に呟く。
「あの女たちはあとだ。どうやら待ち人が来たらしいぜ」
そう言いながら、カウンターの方に進んでいく。その目に桜を捉えながら。
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