出会い

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1 学生服を着た二人の少女が、隣同士で並んで歩いている。 少女の内の一人は相馬香湖で、背が高く、清潔感のある黒いストレートヘアーの持ち主だった。 美しい顔立ちと相まって、気高く高邁な印象を与えた。 やや釣り上がった三白眼の瞳からは、彼女の気の強さが伺え一種近寄りがたい雰囲気があった。 もう一人の少女は八洲亜弓という名前だった。亜弓は香湖の肩位の背程しかなかったが それは彼女が特別小柄と言う訳ではなく、単に香湖の背が高過ぎたのが原因であった。 亜弓は、髪をショートカットにしており、少年のような印象を与えた。 猫の様に大きな瞳が特徴的で、クルクルとよく動いた。亜弓は香湖とは対照的に明るく、人懐っこく誰とでも打ち解けた。  上機嫌に歩いている亜弓に向かって香湖は不機嫌に言った。 「こんな所に連れ出すからには、期待して良いんだな?」 その声色には明らかに不満の響があったが、亜弓は気にする素振りも無く答えた。 「さあ。でもゲームコーナーにはあったんだよ。サードがね」 香湖はその言葉に眉根を寄せた、明らかに不満の体である。 「…そんな事だけで、こんな何でもないデパートに連れて来たのか…?電車で30分もかけて?」 目の前の寂れたデパートを見上げながら香湖は呆れたように云った。 「だってサードがあるんだよ?この前お母さんと行った時に見たときは誰も対戦してなかったけど もしかしたら今日は強い人が居るかもしれないじゃない?」 香湖は呆れたように首を横に振る。 「やれやれ、またお前の思い込みに付き合わされたわけか私は・・・」 しかし亜弓は意に介さない。 「今の時代サードのあるゲームセンターなんて数えるほどしかないんだよ。 それがこんな何でもないデパートのゲームコーナーに有るなんて運命的じゃない?これはきっといるよ!まだ見ぬ強者がね」 香湖はいよいよ大きな溜息をつくと 「運命なんか無い。ましてこんな所に強者などいる訳が無い」 「まあ見てなさいって。私の勘よく当たるんだから。百合夏の昇竜拳なみにね」とニッコリといった。 それを聞いた香湖は益々呆れると 「確かに、あれはうんざりするほどよく当たるな・・・」と呟いた。 話しながら二人は百貨店「ティーガー」のゲームコーナーを目指した。
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