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「不躾で済まない…。こいつはあまり考えて話すことを知らないんだ」
香湖は亜弓を殆ど阿呆呼ばわりしたが、これに対して亜弓は怒って言い返す。
「人を百合夏見たいに言わないでよ!」
「百合夏は考えて話す。ただ私達が理解できないだけだ」
「それは買い被り過ぎじゃないかな?」
「あいつは理解しがたいからな…だがそんな話は今はどうでも良い」
香湖は、逸れた話題を不機嫌に打ち切る。
自分で逸らしたと言う事は忘れたように亜弓は横目で香湖を見ながら、
「勝手。カコは自分勝手だ」と同意を求めるように桜に云った。
桜はきょとんとした体で二人の会話を聞いていたが、亜弓のその言葉に微笑んだ。
「仲が良いんですね。お二人ともここら辺では余り見かけない制服ですけど何処の生徒ですか?」
桜は良く通る声で尋ねる。
「犀星高だよ。そこの二年」
「犀星…結構遠いですね」
「まだ見ぬ強者を求めるためには距離なんて何の妨げにもなりはしないし。明日日曜だしね」
桜と亜弓は多少打ち解けたように話し出した。これは主に亜弓の屈託の無さのお陰である。
それにどうやら二人は可也馬が合うようだったらしく、話は延々と続いた。
テレビ、映画、趣味、洋服、音楽、ケーキ、漫画、などなど。
しかし不思議とゲームの話題、特にサードの話題などは全くでなかった。
桜と亜弓の様子を見ながら香湖は、彼女に感じた只者ではないというあの感覚は錯覚だったのかと疑問に思う。
それほど桜からは格闘ゲームに対する闘志が見えなかったからだ。
しかし矢張り香湖には確信を否定する事は出来なかった。
香湖は桜と闘いたいと思った。
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