運命

10/14

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
上代は更に続けて大谷に言う。 「お前本当に腰抜けだな。お前の店の名誉を他の奴に背負って闘わせるのか? ただ保身の為に?いやマジで泣けてくる。なあ、あんたもそう思うだろ豪鬼使いの姉ちゃん? お前も迷惑な話だよな?こんなレベルの低い店に来たばっかりに こんな負け犬どもの為に闘わせられるなんてなあ?」 上代は、日高と大谷をねめつけながら香湖に同意を求める。 香湖は何も云わず、不機嫌に眉根を寄せただけだった。 日高と大谷は何も言い返せず、ただ唇をかみ締めている。 「さあ如何するね?黙ってPS64を出すならそれでもよし、 その桜と言う女がPS64を掛けて闘うというならそれでもよし」 そういわれた桜は黙って俯く。 しかしそれは臆病からではなく、寧ろある決意が感じられた。 桜は顔を上げると、喫と上代を睨んだ。桜の愛嬌のある瞳は今や無く、 その瞳には鋭い灼熱の焔が灯ったように紅かった。 「…嫌だな。貴方みたいな人。コレダカラ、対戦ゲームなんて嫌い。 誰かが誰かをヤッツケテ優越感に浸る。 何が面白いの。そんな事?良いわ。闘いましょう。 その貴方の得意なゲームでタタカイマショウ」 桜の声は今までとは別人のように、低く冷たく、深淵から響くように苛烈だった。 香湖の全身は粟立った。最初に感じた畏怖と同じだった。 ニノマエサクヤに感じた畏怖と同じであった。 しかしその畏怖を感じ取ったのは、香湖だけのようであった。 亜弓は少し心配げに香湖を見て云う。「何か感じたの?」 香湖は無言で頷き「サクヤと同じだ」と呟いた。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加