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上代は更に続けて大谷に言う。
「お前本当に腰抜けだな。お前の店の名誉を他の奴に背負って闘わせるのか?
ただ保身の為に?いやマジで泣けてくる。なあ、あんたもそう思うだろ豪鬼使いの姉ちゃん?
お前も迷惑な話だよな?こんなレベルの低い店に来たばっかりに
こんな負け犬どもの為に闘わせられるなんてなあ?」
上代は、日高と大谷をねめつけながら香湖に同意を求める。
香湖は何も云わず、不機嫌に眉根を寄せただけだった。
日高と大谷は何も言い返せず、ただ唇をかみ締めている。
「さあ如何するね?黙ってPS64を出すならそれでもよし、
その桜と言う女がPS64を掛けて闘うというならそれでもよし」
そういわれた桜は黙って俯く。
しかしそれは臆病からではなく、寧ろある決意が感じられた。
桜は顔を上げると、喫と上代を睨んだ。桜の愛嬌のある瞳は今や無く、
その瞳には鋭い灼熱の焔が灯ったように紅かった。
「…嫌だな。貴方みたいな人。コレダカラ、対戦ゲームなんて嫌い。
誰かが誰かをヤッツケテ優越感に浸る。
何が面白いの。そんな事?良いわ。闘いましょう。
その貴方の得意なゲームでタタカイマショウ」
桜の声は今までとは別人のように、低く冷たく、深淵から響くように苛烈だった。
香湖の全身は粟立った。最初に感じた畏怖と同じだった。
ニノマエサクヤに感じた畏怖と同じであった。
しかしその畏怖を感じ取ったのは、香湖だけのようであった。
亜弓は少し心配げに香湖を見て云う。「何か感じたの?」
香湖は無言で頷き「サクヤと同じだ」と呟いた。
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