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その光景を、見ている桜の瞳には冷厳なほど冷たい焔が、無機質な輝きを放って輝いていた。
亜弓は、桜の肩に手を掛けると、
「気にしなくて良いよ」と優しく云い、上代に哀れみの表情を向けた。
「貴方は可愛そう。貴方も前に誰かにそうされたんだね。
弱いと蔑まれたんだね。でもさ、そんな気持ちでサードやったって楽しくないよ?
貴方は何でサードをやってるの?」
悲しげに話す亜弓を香湖は黙って見守っていた。
上代は嘲るようなため息をつき亜弓に言う。
「俺は、借りがあるんだよ!あいつに。久遠に!俺を見下した久遠零にな!」
久遠零。この名前に反応したのは以外にも香湖だった。
「久遠。アースガルドの久遠か…」
香湖は上代に、確かめるように尋ねる。
「知っているのか?そうだ!久遠だ!
俺は、あいつがあいつ等が、アースガルドの奴等が気にいらねえ!
あいつ等が支配する斗激を俺が奪う!優勝する!」
上代はさっきまでの泰然とした皮肉な笑みから一点、病的なまでに興奮し叫ぶ。
「おい!お前!!お前は相馬と云ったな!!?俺はお前が欲しい!!」
突然そう叫ぶと、醜く淫らな笑みを浮かべ、上代は舐めるような視線を香湖に向けたが、
香湖は気にする素振りもなく上代の言葉を黙って待つ。
上代は興奮を抑えきれないという風に、云った。
「おまえ自身を掛けて勝負しても良いぜ?
その女は、桜は素人だ。俺が何事も無く勝ちPS64を手にするだろう。
そこでお前は、おまえ自身を賭け、俺はその64を掛けて闘ってヤルのさ!」
「私自身を賭ける…?」
香湖は、上代の突然の言葉に理解しかねるという風に自問した。
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