運命

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上代は桜を指差しながら、香湖に叫ぶ。 「その女は、素人だ。俺は造作なくそいつを倒す。そしたらお前だ。 お前は腰抜けではないだろう。 お前はおまえ自身を掛けて、俺と闘え。お前が俺に負けたらその時は俺のチームだ」 亜弓はそう言った上代に何かを言い返そうと身を乗り出したが、香湖が腕を出して制した。 そして皮肉な笑みを浮かべると、上代に云った。 「随分私を買っているようだが…私ごときで、アースガルドはびくともするまい」 「アースガルドと久遠を知っている。俺には分かる、お前は極上だ。 お前のような奴が居れば、俺達は勝てる。 アースガルドの牙城を崩せる!俺は、久遠の上に立つ事が出来る!!」 上代は大立ち回りに演じるように両手を広げ勝ち誇るように叫ぶ。 香湖は静かに瞳を閉じ決意するように低く強い口調で言った。 「良いだろう。受けて立つ」 上代の口元が釣り上がり冷笑を形作った。 「カコ…」 亜弓が心配げに云った。 「今更後戻りは出来ない」香湖は静かに言う。 「…御免なさい。カコの言うとおりしていれば…」 「気にするな慣れている。それに、上代は勘違いしている…」 そういって香湖は静かに桜を見た。 「果たしてそう簡単に…桜に勝てるかと言うことをだ…」 そのとき桜は静かに闘いの時を待っていた。 いや、それは桜にとっては、闘いとは呼べない何かかもしれない。 彼女の無感情な瞳には、今や楽しげな笑みが浮かんでいた。 彼女は出会ってしまったのだ。運命の場所で運命のゲームに。
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