出会い

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結局日高はその勝負にも破れ、力なく席を立つと、悲しみとも屈辱ともいえない表情を浮かべ、二人の女子高生には目にもとめず、まっすぐに両替機に向かう。 大谷は苦痛に満ちた日高の表情を見かねて言った。 「もう止せよ。まだお前は修行不足と言うことだろう、もう少ししたら案山子(かかし)が来るから、あいつに任せろ」 しかし日高は頑なに首を横に振った。薄っすらと悔し涙を浮かべている。 連勝していたケン使いが連れの二人と共に、2P側から大谷たちの方に姿を見せた。 「あんま弱いんで俺達もう帰るわ。あんた弱すぎ、俺達回しプレーしてたんだけど こいつ等二人に負けるんだもんな、SAも裂破とか神龍拳使ってやってたのに。 やっぱこの辺のゲーセン、レベル低いわ。来るだけ無駄だったぜ」 そう言うとケン使いの男はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべた。 それを聞くと日高は「何だと!」と身体を乗り出してケン使いに掴みかかる。 「へえ、サードで勝てなかったら今度はリアルファイトか。別に俺はそれどもいいよ?」 そう言ってケン使いは大げさに肩を竦めた。 大谷は日高を宥めると、内心イライラしていたが、努めて落ち着いた口調でケン使いに言った。 「もう直ぐうちの店員の案山子って奴が来る筈なんだ。そいつなら少しは君たちの相手にはなれる筈だよ」 「興味ねえなあ。どうせこいつと五十歩百歩だろ?」 ケン使いのその言葉に、日高はいきり立って云った。 「確かに俺は弱いかもしれない。けどなここにも強い奴は居るんだ! お前じゃ案山子には勝てない…絶対だ」 ケン使いは侮蔑的な笑みを浮かべ日高を睨みつけると 「卑怯な奴だ。弱い上に他力本願か。最低の屑だな。 だけど闘わず帰って、後から妙な事を吹聴されたんじゃ胸糞悪い。その案山子とか言う奴と闘ってやるよ」
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