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ガンッ
「零ちゃん、ダメ!!」
「イヤーッ」
震えて涙声で悲鳴を上げた早紀子さんの顔に拳が入る寸前で、顔の横に零ちゃんの手が埋まって早紀子さんはそのまま床にへたりこんだ。
「零ちゃん!!」
その広いキレた背中に飛び付いた。
「……ダメ、零ちゃんの手が…傷ついちゃう」
握った零ちゃんの手は血が滲んでた。
零ちゃんを止めたかった。
「どけ!」
「退かない…零ちゃんが傷つくのはイヤだから」
キレた零ちゃんの目が微かに揺れた。
その指先を握りこむ。
「傷…手当て、しなきゃ」
わたしが騙されたことを零ちゃんが怒ってくれた。
何もできなくて泣いて逃げるだけしかできなかったわたしの代わりに……
「ふみ、」
「わたしは大丈夫だったから」
だから、零ちゃんの大切なその手を傷つけないで。
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