桜の王子様 1

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桜の王子様 1

一度だけ、天使に会ったことがある。 ボロボロになっていた俺に、 そっと手を差し伸べてくれた。 可愛らしい天使に。 昼休みのチャイムが鳴ると、 数人の女子生徒が俺のところへやってきた。 「桜庭くん、今日のお昼の相手、決まってる?」 「まだ決まっていないよ」 「じゃああたしたちと食べようよ、ね」 「そうだね」 俺が了承すると、 女子生徒たちが嬉々としてはしゃぐ。 でも、 男子生徒は納得がいかないようだった。 「いいよな、イケメンは。女に不自由しねーもんな」 「はぁ?何いきなり。キモいんだけど」 「だってそうだろ?桜庭、いろんな女に手出してるって噂だぜ」 「誰にも手を出せないあんたよりいいでしょうが」 「そーだそーだ。それに、桜庭くんはみんなの桜庭くんなんだから」 ・・・ちょっと、困ったな。 この二人は口喧嘩が絶えない。 俺をめぐって何かと言い争いをする。 でも俺から見ると、 喧嘩するほど仲がいいんじゃないのかな、とも思う。 このままだと、昼休みがなくなってしまわないかな。 「さ、桜庭さん」 呼ばれて振り返ると、 教室の入り口に小さくて可愛らしい女子生徒がいた。 1年生だろうか。 「なにかな?」 「ほら、紅、頑張って!」     
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