86人が本棚に入れています
本棚に追加
「那智くんごめーん、この鉢植えそっちに置いくれる?」
「わかりました」
美華さんから鉢植えを受け取って、
指示された場所に置く。
店先に置くと、
丁度、初老の女性に話しかけられた。
「あなた、ここの方?」
「はい、いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「ちょっとプレゼント用のお花を見繕っていただきたいのだけれど」
「畏まりました。では、こちらへどうぞ」
ここは俺がアルバイトしている花屋さんで、
根尾夫婦が営んでいる。
さっき俺に鉢植えを置くよう指示したのが、奥さんの美華さん。
今カウンターで女性の話を聞いているのが、旦那さんの彬さん。
俺は花に関しての知識が乏しいから、
接客や力仕事担当で雇ってもらえた。
実際、俺の接客を評価してここに来てくださるお客さんも多く、
美華さんが「女性のお客さんが増えた」と喜んでいた。
なにはともあれ、美華さんが喜んでくれるなら俺も嬉しい。
・・・あれ?
あの制服、うちの高校のだ。
そして、あの子は確か・・・
「いらっしゃい」
「え?・・・きゃあっ!」
店の中ばかり見ていて、俺が近くにいることに気がつかなかったんだろう。
話しかけると飛び上がって、数メートル離れてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!