86人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の王子様 1
一度だけ、天使に会ったことがある。
ボロボロになっていた俺に、
そっと手を差し伸べてくれた。
可愛らしい天使に。
昼休みのチャイムが鳴ると、
数人の女子生徒が俺のところへやってきた。
「桜庭くん、今日のお昼の相手、決まってる?」
「まだ決まっていないよ」
「じゃああたしたちと食べようよ、ね」
「そうだね」
俺が了承すると、
女子生徒たちが嬉々としてはしゃぐ。
でも、
男子生徒は納得がいかないようだった。
「いいよな、イケメンは。女に不自由しねーもんな」
「はぁ?何いきなり。キモいんだけど」
「だってそうだろ?桜庭、いろんな女に手出してるって噂だぜ」
「誰にも手を出せないあんたよりいいでしょうが」
「そーだそーだ。それに、桜庭くんはみんなの桜庭くんなんだから」
・・・ちょっと、困ったな。
この二人は口喧嘩が絶えない。
俺をめぐって何かと言い争いをする。
でも俺から見ると、
喧嘩するほど仲がいいんじゃないのかな、とも思う。
このままだと、昼休みがなくなってしまわないかな。
「さ、桜庭さん」
呼ばれて振り返ると、
教室の入り口に小さくて可愛らしい女子生徒がいた。
1年生だろうか。
「なにかな?」
「ほら、紅、頑張って!」
最初のコメントを投稿しよう!