母の死

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 私が25才の時に、母は病に倒れ、そのまま帰らぬ人になりました。享年52才。早すぎる死でした。  私にとって母は幼い頃からずっと自慢でした。見た目の美しさと内面の優しさを兼ね備えた人だったからです。一緒に街を歩いている時に姉妹と間違えられたことが度々ありました。母はいつも嬉しそうにはにかんでいました。  そんな母が突然この世を去ったのです。  父の落ち込みは特にひどく、泣き腫らした虚ろな目が宙をさまよう状態でした。父が泣いている姿を見るのは、その時が初めてです。  喪主がその有様ですから、必然的に葬式の段取りは長女である私の役目になりました。  葬儀屋と打ち合わせをし、納棺から骨上げまで慌ただしく動き回り、泣いている暇など無い状態でした。
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