告発

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晶も目を細目ながら兄の晴れ姿を見つめる。 僕はその人垣の中にジェイクの姿を探した。 式が終わりそれぞれが帰路に着く。 それからの二週間、僕達はマイアミのマンションで過ごした。 明日は日本に帰国すると言う夜、テレビで天気予報を見ていた僕たちの目に有名な政治家や大手のCO が殺人教唆の罪で検挙されたとの速報が流れる。 その中にはロス市警の所長を勤めるジェイクの父の名前もあった。 キャスターは内部告発によって事件が発覚したと告げる。 僕はその告発者はジェイクなのだろうと思った。 「ヒロさん、お友だちは大丈夫かしら?」 暗い顔の僕に晶が声をかける。 「晶さん、僕ロスに戻らなければならないんだ。 良いかな?」 彼女は微笑みながら僕の顔を両手で包む。 「勿論よ。 もう少し比奈ちゃんやお母様と居られるのよ、嫌な訳無いじゃない」 僕は改めて彼女に感謝の言葉を言った。 窓の外はマイアミには珍しい霧雨が降る。 「なあ、君って雨女だろう?」 そう聞くと彼女は口を尖らせて違うわと答える。 でも僕の記憶する限り、彼女が僕と二人になる時は必ずと言っても良いくらい雨が降っていた。 翌日の夕方、僕達はロスの家に戻っていた。 晶は比奈子の看病疲れの母に代わりに病院へ向かい、僕はジェイクに電話をかけた。 「ヒロ・・ そうか、テレビのニュースか」 「大丈夫か? 僕に何かできる事はないか?」 そう聞くと飲もうと言った。 待ち合わせは昔良く行った地元のバーを選んだ。 僕が店に入るとジェイクは一人でボックスに座っていた。 いつもはカウンターで皆に囲まれているのに・・ ジェイクは僕を見つけると軽く手を挙げる。 僕は無理に笑顔を作って彼の前に座った。 「なんだまだ頼んで無かったのか?」 そう聞くと黙って笑う。 僕はビールで良いかと聞いてからカウンターに向かってオーダーを告げた。 「皆、俺が親父を告発したと知ってるんだ・・ 影ではああ言う事をしてたとしても、ここの連中には頼りにされてたからな・・ 今は誰も俺を許さないんだ」 僕は落ち込むジェイクに何も言えない。 ただ黙って傍にいるしかなかった。
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