すれ違い

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翌日、会社に行くと上司に呼ばれた。 新しい企画を裕美子と二人で進めてくれと言う。 上司は私達に有る確執を知らない。 未だ仲の良い親友どうしだと思っているようだ。 「中山君には話して有るよ。 君達の新しい感覚に期待してる」 そう言って企画書の原案を置いて行く。 家に戻って鏡を眺めた。 正直元カレの事はどうでも良かった。 でもあの日、由美子から送られてきた無言の写メ・・ とても一緒に仕事をだなんて出来そうにもない。 でも、新しい企画を降りて私が出来る事なんて思いもよらない。 そんな事をしようものならきっと、有ること無いこと噂が流れる。 (親友に男を取られた可愛そうな女・・) そんな目で皆に見られるのは嫌だ・・ 意地でも仕事はやり遂げなければ・・ 机の引き出しからあのベンダントを出した。 迷いながら胸に着ける。 「お願い、私にちからを頂だい・・」 そう呟いてベンダントに触れる。 あの人なら、きっと頑張れって言ってくれる・・ そう思った。 翌日、顔をあらって鏡を見る。 私・・彼の事信じて無いのにこんな時だけ頼ろうなんて、 なんて自分勝手な女なんだろう・・ そう思えてベンダントを外す。 それでも迷いながらバッグの中に入れる。 御守り代わりに持って行くだけなら・・ そう思った。 会社に着くと辞令を受けとる。 新しい企画のリーダーに私が、サブに裕美子の名前があった。 他のメンパーに選ばれた人達が声を掛けて来る。 直に企画会議が開かれる。 私は慌てて化粧室に駆け込んだ。 バッグからベンダントを出して胸に着ける。 わざと襟を少し開けてベンダントが皆の目に付くようにした。 少し明るめのリップで唇を飾る。 アイラインも少しだけきつめにひいた。
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