すれ違い

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それからもう一度鏡を見る。 これで良し・・ そう呟いて涙が流れた。 良い訳無いのに・・ こんなの・・違うのに・・ そう思ってベンダントを外そうとする。 同期の小日向薫が目敏くベンダントを見付けた。 「あれ、珍しい。 佐伯さんが宝石を身に付けてるなんて。 もしかしてそれ、アクアマリンじゃない。 その石って数が少ないのよね、しかもそれ、人気ブランドの物じゃない。 どうしたの? 彼からのプレゼント?」 その問いかけに思わず(ええ)と返事を返した。 「うそー、彼って営業部の三浦さん?」 そう聞かれ答に詰まる。 その時、裕美子が化粧室に入って来た。 私は思わず見栄を張る。 「彼とは別れたの。 三ヶ月位前かな・・ 好きな人が出来たって振られたわ」 そう言って胸のペンダントに手を触れる。 「そうかぁ、そうだよね。 そのペンダントなら7・80万はするもの。 とてもサラリーマンには手が出ないわ」 薫の言葉に私の方が驚く。 「これ、そんなに高価な物なの?」 そう聞くと薫が頷いた。 「やだ、知らないで貰ったの?」 薫がそう聞き返した頃には化粧室にいた4・5人の女性が私の胸を羨むように見ていた。 思わず裕美子の顔を鏡越しに見る。 悔しそうに唇を噛んでいる。 「まだ付き合いだして日が浅いのに・・ どうしよう・・ そんなに高価だなんて、返した方が良いわよね?」 私がそう聞くと薫が首を横に振る。 「ダメよ、そんな高価なものぽんと贈ってくれるんでしょ? 余程のお金持ちか、貴女に惚れてるかどっちかじゃない。 それとも嫌いなタイプなの?」 私は思わず首を横に振る。 「そんな事・・ でも彼忙しくて・・」 「もっと良いじゃない。 貴女だってこの企画の終わるまでは忙しいんだし、お互い会える時間が少ない方が、会えたときに思いがつのるものよ」 そう言って笑った。 「あっ時間だ。 先に会議室に行ってるね」 薫がそう言って化粧室を出ると裕美子が並んで化粧を始めた。 私が化粧室を出ようとすると声をかけた。 「三ヶ月位前・・ね・・ じゃあんな写メなんて必用なかったのよね・・ 健二に聞いたわ。 彼との話し合いの席に新しい彼を連れて来たんですってね・・」 そう言って私を睨む。 「連れて来たんじゃないわ。 彼が勝手に付いて来たのよ」 そう言ってにらみ返した。
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