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個室に入って座り込む。
突然に血の塊がトイレの中に落ちた。
驚きながら見ると気分が悪くなる位の量だ。
その殆どがレバー状の血の塊だった。
「どうしたんだろう?
まさか、流産とか?」
直ぐに目眩と吐き気が襲って来る。
それでも必死で仕事をこなしてタクシーに乗った。
「すみません、浅草の浅草寺裏に有る佐々木産婦人科迄お願いします」
そう言って意識を無くした。
結局叔父は僕の到着を待たずに帰らぬ人となった。
ばたばたと旅だった為に彼女に連絡が出来なかった。
弁護士が葬儀の準備を手伝ってくれる。
相続の手続きが終わるまではアメリカに留まってくれと言われた。
でも僕は直ぐにでも日本に帰りたかった。
何故ならば、今の僕は彼女に電話をしたくても出来ない理由があった。
実は空港に到着早々トラブルに巻き込まれた。
近くで置き引きにあった客が犯人を追い掛けようとして僕の鞄につまづいた。
その人は勢いよくつんのめり側を通るカートに体当りをして撥ね飛ばす。
カートは僕に突進してポケットから携帯が落ちた。
そしてそれを避けようとした別のカートが僕の携帯をひいた。
お陰で僕の携帯は跡形も無く壊れ、データーも残らない位粉々になった。
一応データ復旧の依頼はしたが、業者にはほぼ無理だろうと言われ、バックアップもしては有るが日本に残したパソコンの中だった。
彼女に電話するための手段は今の僕から全て奪われてしまった。
(早く日本に帰らなければ・・)
彼女と 連絡が取れなくなりそうで不安になった。
明日は葬儀と言う前の夜、日本からは僕の両親も駆け付けた。
叔父は僕の父にとって父親の違う弟にあたる。
だが少なくとも僕の記憶の中で二人が仲良く話す姿等見た事もない。
かと言って仲違いをしていると言う印象でもなかった。
夕方父から電話が入った。
話が有るので明日埋葬が済んだ後、自分達が泊まるホテルに来て欲しいとの事だった。
今この電話ではダメかと聞くと、込み入った話だからと言う。
分かったと返事はしたが正直気が重い。
あの事以来僕は父との話し合いの無意味さを嫌と言うほど痛感していた。
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