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僕は思わず父の方を見る。
父は口に人差し指を当てて声を出すなと合図をしていた。
僕は父に渡されたタブレットを読んだ。
(裕人、さっきレストランで僕とお前の話に聞き耳をたてているようなやつがいた。
用心の為にここに戻ったがここも盗聴されてない保証はない。
今からは此で話そう。)
僕は分かったと入力して父を見た。
(裕人、お前は僕達の本当の息子じゃない。
お前の父は弟の圭だ)
僕は声も出ないほど驚いた。
(圭が僕とは父親の違う事はお前も知ってたな。
実は圭の父はアメリカのスパイだったらしいんだ)
僕はまた驚いて父の顔を見る。
(僕の母は薄々それに気付いていたらしい。
母が臨終間際に僕に話した内容によると、僕の父に死なれ金に困った母は水商売で働こうと面接に行ったようだ。
でもお世辞にも社交的とは言えない母は断られ店を出ようとした。
その時に圭の父が声を掛けて来たらしい。
初めは形だけの夫婦で良い、一年で日本からは居なくなると言ったそうだ)
「でも叔父さんが、僕の本当の父さんが生まれた」
(そうだ。
圭の父は優しい人でな、たった一年の夫婦だったけれど僕も母も直ぐに彼を受け入れた。
そして息子の僕から見ても母は幸せそうにしていた。
だから別れた後でも圭を生んだんだ。
多分彼はそれを知っていた。
知っていて我が子を守るために一人でアメリカに戻ったんだ)
「じゃなぜ迎えに来た?」
(圭の存在を知られたからだと思う。
あのまま圭が僕達と居たら圭だけじゃなく僕や母さん迄危ないと思ったんだろう)
父はベットに起き上がる。
それからまたタブレットに向かった。
書き終えると父はまたタブレットに指をさす。
(少しお前にはショツクな話をしよう。
実は圭がお前を連れて来た時お前に息が無かった。
日本に帰った圭が恋人に会おうと彼女の家に行った時、お前の母は誰かに頭を撃ち抜かれ虫の息だったそうだ。
病院に運ぼうとしたが直ぐに息絶えたらしい。
圭は迷った末に恋人の腹を裂いてお前を取り出し急いでお前をシーツに繰るんで顔見知りの僕の友人の病院を頼った。
その時に偶々浅子が流産で入院している事を知って僕にお前を預けた。
流産したとは言え、浅子の身体は子供を育てる為の準備が出来ていたのだろう。
蘇生したお前が泣くと乳が出始めた。
それを見た圭は子供は実子として育ててくれと僕に言った。
正直僕はそんな事は出来ないと言った。
でも浅子がお前を望んだ。
自分の乳に一心に吸い付くお前を浅子の母性が欲したんだ。
圭はお前の無事を確認した後、彼女が生きているように装うと言って直ぐに病院を後にしたよ)
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