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僕は唾を飲み込む。
とても現実の話とは思えない。
だが叔父と暮らした間には思い当たる事もあった。
(僕はね、今回の圭の事も事故じゃない気がするんだ。
だからお前に話そうと呼んだんだ)
「事故じゃないって、何か確証でもあるの?」
(いや、確証って程でも無いんだけど、一月ほど前珍しく圭から電話があって会いたいと言った。
僕はそれなら家にと言ったのだが、圭はなぜか人混みを指定した。
その時に恋人を殺した奴を見つけたと言ったんだ。
もう30年近くなる。
今更捕まえたところで、アメリカに帰ってしまったら日本の法律ではらちが開かない。
そう言うと周りを気にし出した。
僕は夕食をと誘ったが、お前に会いたいからと先に店を出たよ。
でも結局はお前に会わずにアメリカに帰った)
叔父が日本に来ていた・・
知らなかった。
「父さん、叔父さんの昔の恋人を知ってる?
アメリカでは結構有名な女優なんだけど」
(女優?
もしかしたら日系のか?
今日も圭の葬式に来ていた)
「そうだけと、何かあるの?」
(その人は圭の恋人じゃない。
昔の仲間だ)
「仲間って、スパイのか?」
(圭はお前の母しか愛さなかった。
遊び相手ならいたかも知れないが、その人は違う)
「実は明日、その彼女が叔父さんの家に来る。
形見を分けてくれと言ったから何が良いかと聞くと、自分で選びたいって」
(何が有るか分からん。
断る事はできんのか?)
「分からないけど、やってみるよ」
僕は携帯を出して自称叔父の昔の恋人、ジュリアに電話をかける。
両親の観光ガイドを頼まれたからと嘘を言って日延べを申し出た。
彼女はあくまでもにこやかな声で僕の申し出を受ける。
暫く映画の撮影の為に街を離れると前置きしたうえで、また連絡をと電話を切った。
「何とか日にちは伸ばしたよ。
彼女はいったい何が欲しいんだろう?」
(もしかしたら・・だが・・
それが世間に知れると彼等が困る物・・
例えば、二重スパイの証拠・・とか)
僕は父の顔を見る。
「とにかく叔父の家に行って遺品の整理をするよ。
おかしな物や不自然な物を見つけたら、処分する」
そう入力して、母達の待つレストランに戻った。
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