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兄が急にアメリカに戻るとメールをくれた。
今夜のフライトだから昼を一緒にと書かれていた。
あれから10日、彼からの連絡はない。
携帯は不通のままだ。
何度かマンションにも行ってみたが、インターフォンからの返事も無かった。
「ねえ、晶の元カレって、今は中山さんと付き合ってたわよね?」
昼前になって企画室に入って来た広報室の谷川美奈子が声を掛けて来た。
「うん、そうだけど・・何?」
「いや、昨日うちの課の娘達が良く使うラウンジで見たから・・
違う女性を連れてたし声はかけなかったけど、凄く親しそうだったわよ」
私はまたか・・と思う。
彼は追いかけているうちは真剣でも自分の物になると直ぐに飽きるのだ。
そのくせ独占欲は異様な位強い。
私も別れてみて初めて気付いた。
もし彼を自分に留め置くなら絶対に彼を愛さない事だ。
裕美子は今頃どうしているのだろう?
彼の本性をまだ知らずにいるのだろうか?
それとも、知ってなお彼を愛して要るのだろうか?
ため息を吐きながら窓の外を見る。
心配したところで男絡みのもめ事は友情だって壊す。
もう元の親友には戻れない。
女の友情なんて脆い物なのかも知れない。
そう呟きながら胸のペンダントに指を当てる。
彼はどうしているのだろう?
逢いたいって言ったくせに・・
直ぐに返事をすれば良かったのだろうか?
それとも何か急な事情で連絡が出来ないのだろうか?
私をからかった・・それは答えから除外する。
そうじゃないと今の私の気持ちが可愛そうに思えた。
12時きっかりに兄からメールが入る。
会社の向かいにあるイタリアンレストランにいるらしい。
注文はしてあるからとの事だった。
「良かった、お向かいならゆっくり食べられる」
そう呟くと後ろから声か掛けられた。
「新しい男とランチか?
羨ましいな?」
元カレだった。
「私に声なんてかけてると彼女に叱られるわよ」
そう言ってから机の上を片付ける。
席をたって廊下に出るとそのまま追って来た。
「なあ、よりを戻さないか?
裕美子は焼きもちが凄くてさ、正直参ってるんだ。
やっぱりお前が一番だって思える。
やり直そう、なあやり直そう」
はあ・・
こんなに自分勝手な男と何年も付き合ってた私って本当に馬鹿だった。
そう思いながら黙って歩いた。
「あっ、こんな所にいたの?」
裕美子だった。
私の顔を見ながら彼の腕を捕まえる。
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