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「彼に何か用?」
そう聞いてから私を睨む。
馬鹿ね・・
でも少し前の私も同じだったかも・・
そう思いながら二人を無視して先を急いだ。
レストランに入り兄を探す。
兄は窓際の少し他の人からは見えないスペースに席を取っていた。
「遅かったな。
料理が冷めるぞ」
笑顔で私にナプキンを渡してくれた。
食事をしながら兄を見る。
子供の頃から私はこの七歳歳上の兄が大好きだった。
勉強が出来てスポーツも万能、イケメンなのに誰とでも気さくに話す。
友達にも羨ましがられる位自慢の兄だった。
でも大学を終えて外務省に入ると、兄は外国で暮らす事が多くなる。
私も思春期を過ぎて段々と話をしなくなった。
今度のように十日も家に帰って来るのは珍しい。
外で二人で食事をするのだって本当に久しぶりだった。
「なあ晶・・
この前お前の新しい彼氏の事、様子を見ろって言ったけどな、あれ取り消す・・
できたらやめて置いた方がいい・・」
兄が急にそう言って私を見た。
「どうして?
何かあるの?
やっぱりあの人、犯罪柄みなの?」
「いや、違う・・」
兄は少し迷うように私を見る。
これはお前の兄として言ってるんだと前置きしてから私に一枚の写真を見せた。
それは外国の葬式らしい風景をバックに、遺影らしい写真を抱いた彼の姿が写っていた。
「これ・・何処で・・」
「本当は見せてはいけない物なんだけど・・
この男がお前の言っていた男なら、もう日本には帰らないかも知れない」
「帰って来ない・・?」
私は兄が何を言っているのかも分からなくなった。
「彼、今はアメリカなの?
誰か彼の身内が亡くなったの?」
「大きな声を出すな。
これは国の仕事なんだ。
本来お前に話して良い物じゃない。
でももしこの男がお前の話してる男なら、そして僕達が探してる男ならお前が傷つくだけだ。
兄としてそれだけは許せないからな」
兄はそう言うと私から写真を取り上げた。
「お兄ちゃん、まだ彼がお兄ちゃん達が探してる人って決まった訳じゃないのよね」
私は必死になって兄に聞き返す。
「だとしても、諦めた方がいい・・
晶、お前この間、あいつの住むマンションは借り物だと言ったな・・
でもあれはあいつの持ち家だ。
あいつの名は影山裕人、アメリカではヒロ・カゲヤマで通ってる。
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