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「『For You~スペシャルエディション~』!すごい効果だね!だってあの得票数を見たかい?」
「うん、見たよ見た見た!ぶっちぎり!」
ケタケタ笑う二人を猫がぽかんと見る。「えっと、どういう事?」
「アイーダ先輩の邪魔をしてたウィロー・クローのお身体を拝借して、少々実験をしてたんだ」
「そうなんだよ、猫くん。簡単に言うと、飲んだら人を惹きつけるフェロモンが出るお薬」
「まだ開発段階だから薬の方が人を選ぶんだ。強欲で、頭の回転が速くて、ちょっと変わった思考を持っている人じゃないと効果が出ない。ウィロー・クローは条件ピッタリ!」
イェンチとラブがかわるがわる饒舌に説明をしていく。猫は呆れてため息しか出ない。
「でも、エニー君には悪い事をしてしまったね。一番近くに居たからフェロモンに当てられちゃって」
「そうだね。でも、任せて。僕が責任を持って社会復帰させる」
つまり、今回の一連の騒動の半分くらいは、結局のところ、このぶっ飛び師弟によって引き起こされた、という事か。猫は、開いた口が塞がらない。
「狂ってる!」
塞がらないついでに、そう叫んでやった。
「エニーの事もそうだけど、先生。僕は今回、アイーダ先輩に教えてもらったんだ。人の意思は動か
せても、想いは動かせないってことを」
その教えの正しさを、ラブは身をもって知った。どんなに閉じ込めても、自分を騙しても、リュートへの想いが消えることはなかった。
「アイーダらしい答えだね……あれ?なんか思いついた顔してる?」
ラブが堪えきれずニヤリと笑う。
「……えへへ。先生、僕、仮説を立てたんです。それでも想いを動かす方法!」
「本当かい!?詳しくお聞かせ願おうか……ぐへへ」
「やっぱりお前ら狂ってる!」
猫が2度目の叫び声をあげた。
「まったく、主人を2回も狂人呼ばわりするとは、失礼な猫だ。マグロ没収」
ラブが頬を膨らませて猫の方を向き、わざとらしく怒りを表現した。「マグロだけは勘弁して!」と、本気で焦る猫を見て、イェンチが笑った。
「あははっ!……でもラブ、猫くんの答えはそれほど的外れじゃないよ?」
その言葉に、ラブだけではなく猫も興味を持つ。「と、言いますと?」ラブと猫が声を揃えて問うと、イェンチがびしっと決めた顔で答えた。
「恋は、狂ってなきゃできないものさ」
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