11 ラブ・ウェルシアが狂った魔術師たる所以

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 この国は、10年以内に隣国に戦争を仕掛ける。理由は、資源の枯渇により、新たな領土が必要となったからだ。今は賛否が半々に分かれているが、いずれ賛成派が多くなり、国民を丸め込んで目的を達成するだろう。自分の皿にクッキーがなくなったら、他人の皿から奪い取るのが一番簡単で手っ取り早い。  イェンチは、厳密には彼に限らず国内の優秀な国家魔術師たちは、国が軍事力を高めるため、秘密裏に召集された。 「……そっちはどう?」  イェンチは昔から、一方的な争い事を嫌う。力の有る者が無い者をねじ伏せるのを、誰よりも嫌悪していた。だからラブは、本人が目の前で笑って大丈夫だとアピールしている姿を見ても、心配だった。 「今はね~、傀儡をローリスクハイリターンで創れる術式を説明してる」 「‥‥それ、僕も知りたかった」 「違うよ、ラブ!みんなへたっぴ過ぎるんだ!この方法で創っても、ラブが創る個体の10分の1の完成度だ。ね、猫くん」  マグロに夢中になっているところに急に話を振られた猫が、「ちゃんと聞いてたよ」という顔をする。 「本当に始まっちゃうのかな?戦争」 「心配ないよ、ラヴィ。そんな事させない。アイーダも黙って見てはいないよ!」  嘘偽りなく、堂々と自信を持って答えるイェンチに「やっぱり先生はすごいな」と感心し、この人の教えが染み渡っている自分をも誇りに思う事が出た。 「アイーダと言えばラブ、アレは本当に……」  イェンチの言わんとしている事が分かり、ラブの口元が自然と緩む。「なんか悪い顔してるな、二人とも」と猫がつぶやいた。 「そうだね、先生、それはもう……」 「大成功!!」  声がぴったり合い、同時にふき出して笑う。
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